>>はじめに
バイクにおける電源へのコンデンサ並列に関して、ある程度まとまってきたのでここにメモする。
指摘があればお願いします。
>>ノイズとは何か。
ここで主題とするノイズとは電源のゆらぎのことである。
EMI/EMCにおける放射ノイズ(磁界)とは別物で、電源電圧の上昇下降をここではノイズと呼ぶことにする。
>>三相交流オルタネーターの仕様からバッテリー入力のノイズを算出する。
ここではモデルケースとして、仕組みがシンプルで一般的な三相交流発電のバイクをモデルケースとして考える。
バイクの三相交流発電において、発電の周波数は本来ならばオシロで図りたい。
しかし今回は、実験環境が無いので机上で計算することにする。
三相交流発電のバイクにおいて、オルタネーターの磁石の個数は12個。コイルの数は18個が一般的である。(XR250もこの限り)
まず、この2つを組み合わせると、同時に接するコイルと磁石は最大公約数の6個。
一回転することで最小公倍数の36回の電流を起こす。
三相交流なので36回の起電を3で割ると、三相のうち一相は12回の電流を起こしている。
これがプラスとマイナスに振り分けられるので、正負を一組として合計6回の波が起きることになる。
これをバイクの回転に当てはめる。今回はモデルケースとして4500rpmでエンジンを回す。
rpmとは一分間の回転数。ここから秒間での周波数を出す。
4500rpm÷60s=75rps
オルタネーターは秒間75回転する。一回転のうち一相の波形は六回である。
75rps✕6回=450hz
この取り出せた数字は同じく三相交流のHONDA車VFR400Rの交流発電をオシロで計った数値とだいたい合致する。
数式に問題があれば指摘を頂きたい。
ではこの数値を何に使うのかというと、バイクにおける起電のノイズを算出したい。
三相交流なのでレクチファイヤに送られる起電のゆらぎは波同士の干渉による。
一相で一周期の時間に3つの小さな山と谷ができ、ゆらぎの数は三倍になる。
これが、バイクのレギュレーター(インバータ)により直流に変換される。
すると、負の側の波形が正に返るので、波形の数はさらに2倍になる。
つまり、バッテリーに送られる電流の周波数は2724hzとなる。
整理すると、バッテリーに送られる電力の周期の出し方は回転数に21.6かけた数値が三相交流発電(コイル18個マグネット12個)の場合の値となる。
では、バイクの回転数はどのぐらいか。
1000rpmをアイドリングとして上限は9000rpmまで回るとする。
その起電のノイズは何Hzになるかというと、回転数と21.6の積なので21600Hzから194400Hz。
20kHzから200kHzとなる。
以上が起電のゆらぎであるが、この他にもレギュレーターのサイリスタが発するノイズなどがあるが、後の項で考察する。
>>バッテリーから出力する側のゆらぎ。
バッテリーから出力する側のゆらぎはエンジンの点火と同期している。
よって4サイクル単気筒の場合は回転数の2分の1のノイズとなる。
そうなると、1000rpmから9000rpmまで回すとして、そのノイズは8Hzから75 Hzのノイズとなる。(回転数/120)
>>ノイズの実影響
さて、これらのノイズがCDI(点火装置)などにどのような影響をあたえるのかが問題である。
その辺りは計算だけでは出せずに実測値が頼りとなるが、CDI自体がブラックボックスなのでなんとも言えない。
では、悪影響があるという前提で対策を打つとどうするかというと、バッテリーにコンデンサを並列させてノイズを吸収するということになる。
この手法は電子回路では度々用いられ、バイパスコンデンサやデカップリングコンデンサという。(厳密にはこの2つの働きは違うもの)
電子回路の分野では「おまじない」的に使われることが多い。
CDIほどの電子回路であればノイズの対策をしているのではという疑惑が湧いてくるがここでは割愛する。
(つまりはCDIの回路に予めコンデンサが組み込まれているということ。そもそもCDIはコンデンサに電力をためて一気に放出し、点火を行なっている)
>>バッテリーに並列させるコンデンサの選定。
デカップリングコンデンサにはいくつかの種類を用いる。
それは周波数帯域で決められる。
電解コンデンサ10Hzから300kHz
フィルムコンデンサ30kHzから3MHz
セラミックコンデンサ300kHzから30MHz
バイクにおけるノイズの周波数は引き出し側を考慮しても8Hzから200kHzとなる。
これは完全に電解コンデンサでカバーできる帯域となっている。
ではコンデンサの容量は何によって決められているのか。
以下、私は専門外なので、正確な話ではないと思われる。ただいま調査中。
コンデンサというのは高周波の電流を流すことで、低周波の時とは違った振る舞いを見せ始める。この性質が、コンデンサ容量により変化するのである。
このときに考慮すべきなのが、コンデンサの周波数特性である。
コンデンサは流れる電流の周波数によって、インピーダンスが上下する性質を持っている。
インピーダンスとは、ある特定の周波数において電流の流れを妨げる抵抗を表すものである。単位は抵抗と同じくΩで表される。
コンデンサの場合のインピーダンスは、SRF(自己共振周波数)を境目に性質が変化し、低周波からSRFの高周波数に向かってインピーダンスは低下、SRFを超えると逆にインピーダンスは上がりコンデンサからインダクタの領域に入り始める。
(更に電解コンデンサは低温になるほどインピーダンスは高くなる)
メーカーなどではESR(等価直列抵抗)という表現でカタログ表記されていたり、測定器が販売されていたりする。
巷でよく言われるのが、「コンデンサの容量が小さいほどレスポンスが良く、大きいほどレスポンスが鈍い」といわれることである。
しかし、この認識は以上のことから適切ではない。と、私は考える。
レスポンスの上下ではなくESR、SRFという概念の理解が必要である。
「さらに言えば、電解コンデンサにおいてESR、SRFを考慮すべき周波数にはトランスの整流によって起きるようなノイズでは到達しない。」
電解コンデンサでは10μFnコンデンサに100kHzの電流を流してでようやくインピーダンスが下がり始める程度である。(某メーカーカタログ)
そこまで高周波なノイズがレギュレーター内のサイリスタから発生しても、ノイズ測定器をかけられるような開発環境ではメーカー対策が取られていると言って良い。
(セラミックコンデンサを用いるなど)
この場合での高周波ノイズとは、コンデンサのESRによるアンダーシュートや、配線のインダクタンスによるアンダーシュートの増大も指す。コンデンサに高周波の電流を流すと、抵抗やコイルの性質を帯び始めるということである。
バイクにおいて言えば、更にその高周波域の考慮は必要がなくなる。
ホンダの三相交流オルタネーターに限って言えば、常に30V以上の電圧を発電し続けている。
その電圧の交流をレクチファイヤ(インバータ)を通した整流でより平滑なものにし、さらにレギュレーターで12Vへ電圧を降下させることで安定した発電を行なっている。
(つまり、発電のゆらぎの部分をまとめてこそぎ落としているようなもの。12Vから30Vの非常に大きなキャパの間にさえゆらぎが収まれば、まとめてキャンセルできるということである)
これは、エンジンがより高回転(高周波)になるほど発電電圧は上がるので性質が顕著になる。
うまくバランスしているのである。
>>電源平滑としてのコンデンサ。
上記で述べたように、たかが最高200kHzほどの電源のゆらぎでコンデンサの容量が影響することはまず考えにくい。
自動車の電源補助としてコンデンサをバッテリーに並列させる製品は数多く存在している。
その中には「470μFは高回転、1000μFは低回転用」などとなっているものも少なくないが、少々疑問を感じる。
しかし、現に電源にコンデンサを並列させることは電源平滑としてとても有効である。
では、その際にコンデンサの選択として重要なことは何か。
ひとえに容量と搭載スペースの兼ね合いといえるだろう。
バイクの回路では、電子回路では普段扱わないような大電力を扱う。
その際に求められるのは、大きなゆらぎにもある程度対応出来るだけのキャパシティであるといえる。
では、その容量はどのようにして求めるか。
例として、負荷の変動幅が 100mA で、電源が負荷に追従するまで 10μs かかるとする。この間にコンデンサで電圧変化を 0.5V に抑えたいとする。
その際に必要なコンデンサの容量は
100mA * 10μs / 0.5V = 2μF となる。
また、実際の電子回路の開発では、バイパスコンデンサの容量は経験と勘によるところが大きい。
昔のACDC変換機には1000μFほどのコンデンサがパスコンとして使われた。
大体20kHzほどのノイズに対応させる意図があったらしい。
しかし、近年では電子部品の応答速度上昇や、小型化などにおいて徐々に高周波の電流が回路を走るようになった。
ESRの話からも、高周波なほど小容量のコンデンサをパスコンとして用いることになり、さらに言えばセラミックコンデンサの大容量化でコンデンサ自体が小さくなってきた経緯がある。
そうした環境で、従来の勘通りにパスコンを設定して不具合を誘発するということもあるようである。
(私は専門外なので注意)
>>結論
自動車の電源へのコンデンサ並列に関して、重要なのはまずトータルでの容量である。
容量を上げた後にノイズなどの不具合が生じて初めて小型コンデンサの導入を考えるべきである。
しかし、バイクレベルのノイズ周波数であれば、電解コンデンサのどの容量でも十分に対策できるといってよい。
さらに言えば、交流発電によるノイズはメーカー対策が取られていると考えても良いだろう。レギュレーターの働きもある。
小型のコンデンサが高周波のノイズ除去として働くのであれば、私はレクチファイヤの不具合と、オルタネーターの電圧降下を疑う。
しかし、CDIやウィンカーリレーに引き出すためによって起きる電圧降下は無視できない。
CDIの基本原理はコンデンサに電気をためて点火タイミングで放出することである。
その場合起きる電圧降下の周期は8Hzから75 Hz。降下量は様々な要因を含んでいるので実測値を出さねばならないが、サーポートするバイパスコンデンサのトータル容量は「電圧降下の量だけを考慮すれば良い」と私は考える。
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